市場としての中国は排除しないほうが良い

中国だけが、怖い相手ではない。

日本企業の中国離れが進んでいます。
経済がかなり落ち込んでいるらしい、中国に出張に行けば改正反スパイ法で捕まってしまうかも知れない、中国政府によりビジネスを妨害されている、などなど日本のメディアによるネガティブな報道の影響もあるでしょうし、代金が回収できない、現地代理店に類似商品を開発されてしまった、契約を一方的に破棄された、などなど周囲の企業や経営者から漏れ聞く情報に影響もあるでしょう。
とにかく、中国とのビジネスは上手くいかない、騙されてしまう、売りにくいなどの先入観から、輸出先として、市場としての中国をまず排除して、より「安心・安全」と思われている台湾や東南アジアから、海外事業を始めてしまおう、とする企業が多くなりました。

生産拠点としてオワコンだけど、市場としては今も魅力的

確かに「世界の工場」としての、製造拠点としての中国は、人件費の高騰や、現地経営者が受託製造から自社開発・自社ブランド志向へ変化したこともあり、オワコン化しています。多くの日本企業は東南西アジアに製造拠点を移行させることに成功しています。
けれども、市場としての中国は今もなお魅力的だと思うのです。人口ではインドに抜かれましたが、それでも13億人を超え、低所得者・下位中間層の暮らしは以前と比べ確実に良くなっています。経済成長は鈍化し、景気も以前ほどイケイケではなくなりましたが、それでも成長率は4%台をキープするでしょうし、既に母数が日本より大きいのですから、年率の成長額は日本を大きく上回っているのです。
若者の失業率が2桁とは言え、上海や深圳に行ってみれば若年層を含め日本より活き活きとしていて、活気があることを実感するはずです。

中国市場は広大でそのすべてをカバーしようとすれば膨大な資金力や労力が必要となりますが、貴社の商品やサービスにとってブルーオーシャンたる市場(都市や地域)はきっと存在するので、それを見いだしピンポイントで攻めれば、中小・零細企業であっても成功の可能性は高まります。

台湾や東南アジアでも、中国みたいなトラブルは起こります

中国市場を避けて、親日的印象の濃い東南アジアの市場から攻めようとして、上手くいかなかった企業の事例をいくつも見てきました。親日的で美味しい話をしていた現地企業が契約交渉の段階に入って、強硬な条件を突きつけてきたり、商談を始めたばかりの企業が勝手に商標登録をしてしまったり、売掛金が回収できなくなったり。中国相手じゃないので、上手く行くと思っていたのに、という事例は多くあります。

中国に限らず、外国とのビジネス・取引は、国内のそれとは大きく事情が異なります。性善説で乗り切ることは不可能だと思ったほうが良いのです。台湾企業だから、ベトナム人相手だから、中国のようにはならないと思った、としてもあとの祭りです。

中国だけが怖いわけでは無いのです。中国だけ特別なわけではなく、海外事業や輸出を始めるにあたっては、国内取引とは異なる視点で相手を見極め、ビジネスとしてより慎重に進めていく必要があるのです。

成長著しいと言われるインドネシアやベトナムであっても、中間層以上の市場は中国の10分の1以下、ジャカルタと中国・成都の都市市場を比較しても、後者のほうがはるかに大きいですし、機会も多いはずです。

もちろん、台湾や東南アジアの主要都市も魅力的な市場です。けれども海外事業や輸出先を検討するときに、中国は怖いらしい、中国ビジネスは難しいらしい、という先入観だけで、中国を排除するのは少しもったいない印象があります。

どの国相手でも、国外の取引先・市場は日本国内よりはるかに厳しいのは事実です。

だとすれば、貴社の商品やサービスを最も多く受け入れてくれやすい市場を見つけて、まずそこから始めるのが良いと思います。たとえ、それが中国だとしても。